建設水道委員会の視察で丹波篠山市に向かいました。
その前に、まず簡単に「委員会視察」について説明いたします。
委員会視察とは
長崎市議会には4つの常任委員会が設置されています。
総務委員会、環境経済委員会、教育厚生委員会、建設水道委員会です。
それぞれの委員会が2班に分かれて、委員長、副委員長がリーダーとなって年に1回他都市に行政視察に伺うことが慣例となっているようです。
またその期間は2泊3日というのが慣例になっているようです。
(この慣例が良いかどうかについての私の見解はまた別にじっくり述べるとします)
副委員長として私が決めた視察地、丹波篠山へ
今回は私は副委員長でしたので、視察地を決めさせていただきました。
丹波篠山市は私が何者でもなかったただのリノベーション大好き人間だった頃からの憧れの町。
町全体が町の価値を掘り起こして磨いているその姿勢に非常に共感しておりました。
そして今回、迷わず候補地として出させていただいたのが丹波篠山市でした。
丹波篠山市へのアクセス
丹波篠山市は大阪空港からモノレール、私鉄、JRと2度の乗り換えを経て1時間半くらいかかる場所にあります。
今回は途中駅である宝塚に着いたのが夕方だったので、そこで宿泊しました。
このことが物議を醸すことになることを、この時の私は知らなかったのですが、宝塚市の駅からの動線などを皆さんで歩いて回ってその日を過ごしました。
視察への批判
宝塚市自体は視察内容には組み込まれていないので、私たちの自発的な動きでしたが、相当なご批判も受けました。
誤解されるような出し方をした私の非もあるし、視察自体の価値がもたらすものが何であるのかということ自体、市民の皆さんにご理解いただけていないことはこちら側の力不足でしかないと思います。
なので、視察が意味のあるものだということを証明できるようにしていこうと、私は固く誓ったのでありました。
きっかけをいただいたことは本当にありがたいと思っています。
議会の年間の視察費
何よりあのご批判により、視察費として少なくとも年間3,100万円が計上されているということが分かりました。
コロナによって動きが制限されたために使われなかった額として決算書に載っていた額です。
非常に大きな金額であると思います。
常任委員会、特別委員会だけの視察費以外にも議長、副議長の出張、随行される職員さんの費用なども含めてなのではないかと思いますので(具体的にどこまでが含まれているかは決算書からだけでは不明)、純粋な金額は分かりませんが、ここについても3,100万円の実りというものを真剣に追い求めないといけないと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、丹波篠山市の取り組みをご紹介いたします。
最初に丹波篠山市役所に伺い、そこで丹波篠山市の空き家対策や伝統的建造物保存地区の取り組みについてご説明をいただきました。
それから城下町地区に連れて行っていただき、説明を受けながら散策しました。
丹波篠山市伝統的建造物保存地区の取り組み
丹波篠山市は城下町と農村・宿場町集落の2つのエリアがあり、それぞれの特色を生かした街並み保存がなされています。
H17年より以前から外から入ってきた方々からの視点により、この地区の魅力が再発見され、そこから街並み保存への意識が高まったと市議会議長がお話をしてくれました。
「元々ここに住んでいた人たちにとってはただの当たり前の田舎だったんです」との言葉は非常に印象的でした。
市役所内で説明を受けている間も、ずっと同席してくださった丹波篠山市の市議会議長小畠政行さん。
地元のデカンショ節を唄って歓迎してくださいました。
他市の視察の視察でも最後まで同席してくれるとは普通はあり得ないことだと、同行の議員の諸先輩方も丁寧なご対応に驚いていました。
1軒にかけるコストも非常に大きいのでいっぺんにはできないのが課題のようではありましたが、丁寧な修景事業によって町並みの保存状態は非常に美しかったです。
空き家活用と定住促進
とてもいい取り組みだと思ったのが、こちらの「空き家活用と定住促進」をリンクさせた事業です。
長崎市では空き家対策は「建築部」が行なっていますが、丹波篠山市では「創造都市課定住推進係」が担っています。
定住に向けて空き家を活かしていこうというのはどこでも考えることではありますが、創造都市課という長崎市で言うところの企画財政部(雑な説明ですが、全ての長みたいな部)のようなところで扱っていること自体、空き家対策や定住にかける意気込みが違います。
上の絵でもわかるように、お試し滞在も2種類設けて慣れ親しんでもらおうというステップが設けられています。
定住促進に向けた取り組みの始まり
職員の政策課題研究から生まれた「住もう帰ろう運動」が今の施策の根底にあるとのことでした。
丹波篠山暮らし案内所「クラッソ」
上記のリンクをご覧ください。
丹波篠山での移住を希望する方の専用サイトです。
こちらも「移住相談」と「空き家バンク」がセットになった取り組みをしています。
これもまた長崎市としてヒントになるやり方だなと思いました。
空き家バンクを活用した方に謝礼金
長崎市の空き家バンクは市場に流通しないような価値のない物件しかないと言われます。
普通に運営するとそのようになってしまうのは致し方ありません。
不動産屋さんも当然、売れる物は自前で高く売ろうとするので当然です。
そこで丹波篠山市では、「空き家バンク自体の価値を高めること」と「空き家バンクに登録することでのインセンティブ」に予算をつけます。
前者がクラッソであり、後者が下記の事例です。
所有者にも不動産事業者にもメリットがなければ空き家バンクを利用してもらえないということで、それぞれに謝礼金が設けられています。
また、上記の図のように、空き家バンクの家を活用して定住する方や事業をおこす方には改修費の一部を助成するなどの支援もしています。
また、丹波篠山市のすごいところはもう一つ。
自治会を巻き込んだ空き家対策
「②空き家調査の実施」をご覧ください。
各自治会主体で空き家調査を実施し、自治会で紹介した物件があった場合には謝礼金を、そして成約があった時にも紹介自治会に市から謝礼金が支払われます。(空き家バンク自治会等謝礼金については2枚前の図にて詳細があります)
こうして空き家件数は着実に増えて、対策ができているとのことをお伺いいたしました。
長崎市は40万人都市ですので、単純に同じようにはできません。
けれども、自治会の方々に協力していただいて正確な空き家を特定し、持ち主の把握などに努め、次の手を打つための素早い判断の根拠とすることはできるのではないかと思いました。
お試し滞在支援事業〜「おためし暮らし」
2ステップのお試し滞在を設けているというのは前半でもご紹介しましたが、その詳細がこちらです。
特に面白いのはJR西日本との共同プロジェクト「おためし暮らし」というものです
上記のリンクに行ってみると、現在丹波篠山市を含むJR西日本沿線の5自治体が参加していました。
これまでは関西首都圏に住んでいたけれど、JR西日本を利用して通勤しながらこっちの町に住んでみよう。
これでJRにとってもメリットになるというのは確かにそうですね。
長崎市で言うと、武雄駅までを勤務先とされている方達に、長崎お試し暮らしを提案してみることができます。
JR九州さんも西九州新幹線の利用者増のためにこうした取り組みを一つ考えてみてはいかがでしょう。
大きな課題、迫り来る所有者高齢化の危機
こちらの円グラフはとても考えさせられるものでした。
現在、伝統的建造物保存地区の物件の所有者の半数近くが70代以上ということで、これらの物件も持ち主の代替わりが迫っているということになるとお話を受けました。
そうなった時にまた空き家となっていくのか。
保存するのか解体するのかわからないまま放置されてしまうのか。
まちづくりのためにも、今から働きかけていくことが急務なのだということを思い知らされました。
長崎市は現在、1万2000戸もの空き家があると推定されています。
それも推定値でどんな出し方をしているのかは私はよくわかっておりません。
長崎市でも所有者の年齢層というのはそう変わりがあるとは思えませんので、これから空き家は加速度的に増加していくということになり得ます。
ここに対して先んじて動く必要があることを痛切に感じました。
おわり
丹波篠山市での学びはこのような内容となりました。
長崎市の職員の皆様とも共有したいと思います。
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